120.成年後見を利用して売却したい

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です

年齢を重ねてくると、大切な両親が認知症になって施設に入らなければならないといった状況がどのご家庭でもあてはまると思います。

上記のような状況でも「両親が所有されている不動産」の売却は基本的に所有者本人しかできないため、子どもが勝手に売却ができません。

しかし、「成年後見制度」を使えば売却可能にする方法があります。

「成年後見制度の概要」「認知症になった親の不動産を売却するための手続きや流れ」の注意点を解説します。いつか考えなくてはいけない両親の老後のために、ぜひ参考にしてください。

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認知症の親の不動産は売却できる?

認知症になった親が所有する不動産は、通常の売却の流れでは売却できません。

不動産の売却は、所有者本人による「売却しよう」という意思決定が必要です。
認知症で判断力や記憶力が低下した状態は「意思能力がない」とみなされるため、売買契約が結べないのです。
意思能力がない人が結んでしまった契約は無効になります。

「委任状を作成して、子どもが手続きを代行すればいいのでは?」と、うかもしれませんが、意思能力がない状態では第三者への委任もできません。
だからといって、不動産を動かすことができずに放置されるという状態も困りますよね。

認知症などで意思能力がないとみなされた方の不動産を売却するには、「成年後見制度」を利用する必要があります。
次でこの成年後見制度について、詳しくご紹介しますね!

ただし、認知症の中でも症状の進み具合はさまざまなため、「意思能力」があると判断されるなら、通常と同じく売却できる可能性もあります。

認知症の親の不動産を売却するために必要な「成年後見制度」とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害などから判断能力が十分ではない人の代わりに、後見人が財産の管理や法的な契約締結を行って本人を保護する制度です。

たとえば、本人に代わって不動産の売買契約や介護施設への入所契約をしたり、遺産分割協議をしたりします。
本人の意思能力がない状態で結んでしまった不利な契約を解約することもできます。

本人の判断能力の程度によって「後見」「補佐」「補助」の3つの種類があり、行える行為の範囲も異なります。

  • 後見:判断能力が全くない人を保護する
  • 補佐:判断能力が著しく不十分な人を保護する
  • 補助:判断能力が不十分な人を保護する

成年後見人の選任に必要な書類や費用

成年後見人は本人または配偶者や四親等以内の親族などが申立てをし、家庭裁判所によって選任されます。

必要な書類

  • 成年後見人申立書
  • 申立ての附票
  • 申立て事情説明書
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 親族関係図
  • 親族の同意書
  • 本人と後見人候補者の戸籍謄本
  • 本人と後見人候補者の住民票
  • 後見登記されていないことの証明書
  • 本人の精神鑑定や診断書(必要な場合)

必要な費用

  • 申立書へ貼付する収入印紙:800円
  • 選任後に後見登記する際の登記手数料:2,600円
  • 裁判所へ予納する郵便切手 :約3,000~5,000円
  • 戸籍謄本や住民票の取得費用:1通300〜450円程度
  • 精神鑑定や診断書代:~10万円程度

※成年後見人が決まれば、月2万円程度の報酬を支払う必要もあります。

成年後見人として選任されるのは、親族のほか弁護士や司法書士、福祉関係の法人、自治体長などです。
後見人の職業や経歴、本人との利害関係、そのほかの事情を考慮して裁判所が選任します。

成年後見制度を使って認知症の親の不動産売却をする流れ

成年後見制度の申し立てから、認知症の親が所有する不動産を売却する流れをご紹介します。

【1】「成年後見制度開始」の審判を申し立てる

必要書類を集め、家庭裁判所へ申し立てます。

【2】家庭裁判所により法定後見人が選任される

通常は申し立てから審判まで2ヵ月程度、選任・後見登記の手続きが終わるまでには申し立てから4ヵ月程度かかります。

【3】不動産会社へ売却を依頼し、売却をスタート

成年後見人が不動産会社と媒介契約を結び、不動産の売却活動を行います。

【4】居住用不動産の場合は裁判所の許可を受ける

被後見人の居住用不動産を売却する場合は、裁判所の許可を受ける必要があります。
裁判所へ居住用不動産処分の許可の申立てを行って許可を受けます。

【5】買主と売買契約を結ぶ、決済、引渡

買主と売買契約を結んで不動産を売却します。
残金の決済と同時に引渡し、所有権移転登記の手続きも行います。

不動産会社との媒介契約の締結や買主との売買契約の締結、所有権移転登記の手続きなど、本来であれば本人でなくてはできない契約や手続きも、成年後見人が代理で行うことができます。

認知症の親の不動産を売却する際の注意点

認知症の親の不動産は成年後見制度を利用することで売却できますが、その際に注意すべき点が2つあります。

【注意点1】居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要

成年後見人は本人に代わって売買契約ができますが、本人の居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要になります。
「本人の利益のため」という正当な理由が必要なことを覚えておきましょう。

例えば以下のようなケースで認められることが多いです。

  • 売却代金を本人の生活費や医療費にあてる
  • 売却代金を本人が介護施設に入所する費用にあてる
  • 建物が老朽化し維持管理費が高額になる

【注意点2】余裕を持って計画的に売却を!

成年後見人制度を利用した不動産の売却には時間がかかります。

成年後見人の選定は申し立てから選任、後見人登記を済ませて売買契約を行える段階に進むまでに3~6ヵ月程度の時間がかかるのが一般的。
居住用不動産を売却する場合には家庭裁判所からの許可が必要なので、そこからさらに時間がかかります。

余裕を持って計画的に申し立て、売却活動を行う必要があります。

まとめ

・認知症の親の不動産は売却できる?
認知症では意思能力が十分ではないと判断されれば、不動産売買契約を結ぶことはできません。認知症になった親の不動産を子どもが処分することも、そのままでは通常できないのです。ただし認知症が疑われていても「意思能力」があると判断されるなら、通常と同じく売却できる可能性もあります。

・認知症の親の不動産を売却するには「成年後見制度」が必要
判断力が十分ではない人を保護するための制度「成年後見制度」を利用すれば、認知症の親の不動産を売却することができます。成年後見人は家庭裁判所へ申し立てをし、選任されます。

・成年後見制度を使って認知症の親の不動産売却をする流れ
成年後見人選任の申し立てを行い、選任・後見人登記後、不動産の売却が可能です。本人の自宅の売却の場合は家庭裁判所の許可を得てから売買契約を結ぶことになります。

・認知症の親の不動産を売却する際の注意点
認知用の親の不動産を売却するには、成年後見制度を利用しなくてはいけません。申し立てから選任、後見人登記には時間がかかる点、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要な点に注意してください。

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