266.土地と建物の所有者が異なる場合の不動産売却手続きについて詳しく解説〜その2

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。
土地が親名義で建物が自分名義というように、土地と建物で所有者が異なるケースは意外と多く見られます。前回のコラムでは、そうした場合の売却方法として「土地または建物のみを売却する」「名義をひとつにまとめて売却する」「名義を変えずに同時に売却する」という3つのパターンがあることをご紹介しました。
この中でも、「名義を一つに統一してから売却する」方法が最も一般的でスムーズです。しかし、さまざまな事情により名義変更や売却がすぐにできないこともあります。今回は、そういった複雑な事情を抱える物件の売却方法について解説していきます。

名義の変更や売却がスムーズに進められない事情がある場合の対応方法
土地と建物で名義人が異なる不動産を売却しようとしても、さまざまな事情が壁となるケースがあります。今回は、そうした状況で売却を成功させるための方法を具体例を交えてご紹介します。
離婚後の財産分与を目的とした不動産売却
近年、不動産をペアローンで購入し、共有名義にする夫婦が増えています。しかし、離婚時に残債がある状態だと、売却に向けた手続きは非常に複雑になります。
共有名義の不動産を財産分与のために売却するには、まず名義を一つにまとめることが重要です。離婚という事情を考慮すると、打ち合わせのたびに顔を合わせるのは避けたいのが本音。売却をスムーズに進めるためにも、まず共有名義を解消しておく必要があります。
ただし、名義統一のためには相手が持つ持分を買い取る必要があり、その資金の確保が前提となります。さらに住宅ローンが残っている場合は、相手方のローン完済も条件になります。
また、名義変更には、借入先である金融機関の承諾が不可欠です。資金が足りないからと無断で名義変更を行えば、ローンの一括返済を求められるリスクがあります。
もし買い取り資金が用意できない場合には、「財産分与を目的とした一時的な名義変更」であることを金融機関に説明し、理解を得ることが求められます。ただし、必ずしも承諾されるとは限らない点にも注意が必要です。
ケース2:名義人が認知症で名義変更できない
親所有の土地に子が住宅を建てている場合で、親が認知症になってしまったケースでは、親子であってもその土地を勝手に売却したり名義変更することはできません。
ただし、親が入院中でも、まだ意思判断が可能であれば、委任状によって子が代理人となり、手続きを進めることは可能です。
ここでのカギとなるのは「親に意思決定能力があるかどうか」です。認知症が進行しており、それが医師により確認された場合、代理手続きはできませんし、虚偽の申告で進めた契約は法的に無効となる恐れがあります。
〈後見人を選定する〉
不動産の所有者が認知症を患っている場合でも、「成年後見制度」を利用すれば売却が可能となります。この制度は、判断力が低下した人の財産を守り、本人の利益を損なわないよう支援する仕組みです。
申立ては本人や配偶者、4親等以内の親族などが行えます。申し立て後は家庭裁判所が後見人を選任し、1~2カ月ほどで審判が下ります。ただし、後見人には必ずしも親族が選ばれるとは限らず、最近では弁護士や社会福祉士といった第三者が指名されることも少なくありません。
確実に親族を後見人としたい場合は「任意後見制度」の活用が必要ですが、これは本人に判断力があるうちでなければ契約できません。公正証書で契約を結んでおけば、本人の判断能力が低下した際に、あらかじめ選んだ人を後見人にすることができます。
〈売却が認められない場合もある〉
成年後見人が家庭裁判所から選任された場合でも、本人(成年被後見人)の住まいとなっている不動産を売却するには、裁判所の許可が必要です。この許可が得られるのは、不動産の売却が「本人のために必要」と判断されたときだけです。
たとえば、介護施設への入居費用や生活資金の確保、自宅へ戻る見込みがなく税金負担だけが続いているといった状況なら、売却が認められる可能性があります。しかし、成年後見人や親族の借金返済のために売ることは許可されません。
土地と建物の名義が異なる場合、親など別の所有者の健康状態にも注意が必要です。認知症の疑いがある場合には、早めに今後の不動産の扱いについて本人の意思を確認し、任意後見制度の活用を検討するのが賢明です。

ケース3:名義人と連絡が取れない
土地と建物の名義人同士が連絡を取り合える状況であれば、これまでご紹介した方法で売却を進めることが可能です。しかし中には、名義人の一方と連絡が取れないケースも存在します。たとえば、子どもが親名義の土地に住宅を建てたものの、その後親が亡くなり、遺産分割協議が行われないまま時間が経っているような例です。
〈遺産分割は相続人全員の合意が必要〉
相続人が複数存在する場合、その土地は共有名義となります。全員と連絡が取れる状況であれば、遺産分割協議を行って名義人を確定することが可能です。しかし、長い間音信不通の相続人がいると、スムーズには進みません。中には、相続が発生したことを知らずに代襲相続人が所在不明となっているケースも考えられます。
遺産分割協議は、全相続人の同意があって初めて成立します。連絡が取れないからといって、その相続人を外して手続きを進めることはできません。まずは、所在が不明な相続人を探し出すことが重要です。
〈不在者財産管理人の選任を申立てする〉
戸籍の附票などを活用しても相続人が見つからない場合は、家庭裁判所に申し立てて不在者財産管理人の選任を依頼し、その管理人を通じて遺産分割協議を進めることになります。
不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を適切に管理するために任命される人物です。民法第103条に基づき、財産の保存権限は持っていますが、遺産分割や財産の処分には家庭裁判所の許可が別途必要となります。
これらの手続きを経て遺産分割協議を行い、名義を統一するか売却に同意してもらう流れとなります。
次回は、土地と建物で名義が異なる不動産を売却する際の具体的な進め方についてご説明します。
まとめ
「親の借金で子どもの家が取られるのでは…?」という不安を感じる方は少なくありません。しかし、親が生きていて、子どもが連帯保証人でない限り、借金の返済義務は子どもには発生しません。借金はあくまで借りた人と貸した人の契約であり、親子であっても他人扱いになります。ただし例外もあります。たとえば、子どもが自分の意思で保証人になっていたり、自宅が借金の担保として使われていた場合、その返済が滞れば自宅が競売にかけられることも。大切なのは、自分がその借金にどう関わっているかを正しく理解することです。
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