209.売却前に注意!土地の境界紛争への対応と事前準備

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。

不動産売却時に直面する可能性がある境界問題について考えてみましょう。境界が明確でないために、隣家の建造物が自身の敷地にはみ出していたり、逆に自身の建物が隣地に入り込んでいたりするケースが珍しくありません。隣地所有者との境界認識の相違はどのように解決すべきでしょうか。本稿では、典型的な事例と共に、その対応策を詳しく説明します。

土地の境界トラブルの事例

長年良好なお付き合いをしてきたお隣と、土地の境界トラブルが原因で険悪な関係になることがあります。なぜそんなことが起こってしまうのでしょう。

①塀による境界明示は曖昧

現代では、土地の境界を明確にするために四隅などに四角い境界標を打ち込むことが一般的になっています。しかし、つい最近まで多くの人々は塀や垣根を境界線として認識し、それで十分だと考えていました。この曖昧な境界設定は、日常生活では特に問題を引き起こしませんでしたが、土地の売却時には状況が大きく変わります。
不動産取引の際には、正確な境界の確定が不可欠となるため、改めて詳細な調査が必要になります。塀や垣根だけでは正確な境界を判断することが難しく、さらに当初から誤った位置に設置されていたり、地震や豪雨などの自然災害によって移動している可能性もあります。
このような不明確な境界設定は、売主と買主、あるいは隣接する土地所有者との間でトラブルの原因となることがあります。例えば、実際の境界線が塀よりも内側にある場合、売主は予想以上に狭い土地を売却することになり、買主との間で紛争が生じる可能性があります。また、逆に境界線が塀よりも外側にある場合、隣地所有者との間で問題が発生する可能性があります。
そのため、不動産取引を円滑に進めるためには、専門家による正確な境界測量と、関係者間での合意形成が重要になってきます。さらに、将来のトラブルを防ぐためにも、定期的な境界確認と適切な記録保持、そして必要に応じて境界標の設置を検討することが賢明です。

〈事例/①塀が境界となっていた物件でのトラブル〉

会社員Aさんが代々の自宅売却を決意し、敷地境界の確定に直面しました。隣家とはコンクリートブロック塀で区切られており、父からは「塀は我が家が建て、境界は塀の外側」と聞いていました。しかし、隣人Bさんは「塀は共同負担で、境界は塀の中心線」と主張。証拠書類は双方になく、境界確定が難航しています。この問題解決のため、Aさんは土地家屋調査士に相談することを検討し始めました。

②境界標を勝手に一時撤去

土地の境界標は耐久性のある材料で設置するのが原則ですが、各種工事で一時的に移動せざるを得ない状況もあります。
このような場合、隣接地所有者の立会いで現状を記録し、同様に両者で確認しながら元の位置に戻すことが重要です。

ただし、施工業者が適切に復元しないことがあり、明らかな移動跡は境界標の信頼性を損ない、
トラブルの原因となるため、慎重な対応が求められます。

③境界標を移設していなかった

古くから隣家同士の仲が良く、合意によって敷地境界線を変更したにもかかわらず、境界標を移動しなかったためにトラブルが発生することもあります。

〈事例/③境界標の移設に関するトラブル〉

農業従事者のCさんと隣人のDさんは親戚で、両家の間には御影石の境界標が設置されていました。しかし、Dさんが土地を売却するために土地家屋調査士に依頼したところ、境界線が実際にはCさん宅の敷地に約5メートルも食い込んでいることが判明しました。CさんとDさんの父親は従兄弟で、Cさんの父親が資金援助の見返りに土地を譲った可能性があるものの、その証拠はありませんでした。結局、Cさんは境界線をめぐる訴訟に発展し、裁判での境界確定を求めることになりました。土地の境界線は、世代を超えても明確にしておく必要があり、境界標の移設も重要です。

④隣地所有者が納得しない

登記済の地積測量図があり、その通りに境界標が設置されているにもかかわらず、境界確定に隣地所有者が納得しないケースがあります。

〈事例/④隣地所有者が境界に納得しないトラブル〉

隣接地主Eさんが古い測量図を境界根拠として主張しましたが、一方的に作成された図面は境界確定の証拠にはなりません。他方、隣人Fさんは境界確定後に所有地面積が減ることを理由に異議を唱え、さらに既存の境界標を「一方的設置で無効」と主張しました。客観的データがあっても、相手の思い込みでトラブルになることがあり、注意が必要です。

⑤建物が越境していた

敷地境界線を越えて、建物や塀、庭木などが隣地に侵入している状態を越境といいます。境界線の確定後に、建物の一部が越境していることが分かり、トラブルに発展することがあります。越境は地面上だけでなく、屋根や雨どいが隣地の上空を占有している場合にも適用されます。無断の越境は許されず、意図的でなくても越境している場合には解消の義務があります。屋根の越境はしばしば軽視されますが、実際には土地の売却時に建築可能な面積が減少するため、大きな問題となります。撤去が困難なため、特に屋根の越境に対する解決には時間がかかることが多いです。

⑥所有地が接道していなかった

位置指定道路(私道)との接道は、見た目だけでは確かなことが分かりません。公図や道路位置指定図で、しっかりと道路境界を判別する必要がある点に注意しましょう。

〈事例/⑥未接道のトラブル〉

会社員のGさんは、祖父が所有していた農地を整地し、そこに新居を建てる計画を立てました。その土地は10年前に造られた私道(位置指定道路)に面しているため、接道する敷地として建築確認申請をする予定でした。しかし、ハウスメーカーの調査で、敷地と位置指定道路の間に5センチメートルの隙間があり、実際には接道していないことが判明しました。この隙間は、開発業者が位置指定道路を作る際、Gさんの祖父が同意を拒否したために分筆されたものでした。Gさんは、その分筆された敷地の買取を求めましたが、提示された価格が相場の十倍以上であったため、新築計画を断念せざるを得ませんでした。

⑦所有者がそろわない

境界を確定するためには、原則としてすべての土地所有者の合意が必要です。隣地の所有者が1人であれば、大きな問題がない限り境界確定はスムーズに進みますが、複数の人が共同で所有している場合は、困難が生じることがあります。例えば、隣地の相続手続きがまだ終わっていない場合や、所有者全員が遠方に住んでいる場合、交渉に多くの時間と費用がかかることになります。

土地の境界トラブルの解決法

土地の境界を巡るトラブルは、基本的に当該地所有者と隣地所有者の話し合いによって解決を図ることになります。

しかし、曖昧な記憶や一方的な思い込みを元に話し合ったところで、問題は解消しません。トラブルの解決には、どのような準備や方法が必要なのでしょうか。

①隣接地の権利関係を調査する

隣地の所有者を正確に把握することが、まず基本です。隣接する土地の境界線に関して、双方の所有者が合意した際に作成する「筆界確認書」は、隣家の居住者ではなく、その土地の所有者が対象となります。したがって、法務局で全部事項証明書を取得し、所有者を正確に確認することが重要です。

②地積測量図を確認する

地積測量図は、土地の面積、形状、境界標の位置などが記載された公的な図面です。これらは登記の際に添付され、法務局に保管され、客観的な資料として利用できます。しかし、登記申請に必須の書類となったのは昭和35年からで、当時の測量精度は低かったため、誤差が発生することがありました。そのため、訴訟でも通用する正確な資料としては、平成18年以降に座標値の記載が義務化されたものが適しています。さらに平成20年以降、世界測地系データによる測定が採用され、工事などで境界標が失われたりずれたりしても、高精度で再現可能です。

③地積測量図と境界標を照合する

近年の地積測量図は精度が向上しているとはいえ、図面だけでは隣地の所有者に土地の境界を納得させることは難しいです。実際にその地積測量図通りに境界標が設置されていることで、土地の境界を確認することが可能になります。

不動産登記規則第77条では、「現地に境界標がある場合、地積測量図に記録しなければならない」と定められており、境界標は石、コンクリート、合成樹脂や錆びにくい鋼製など、堅固で長持ちする材質を用いることが求められています。

木製の杭や中空のプラスチック杭は耐久性が不足しているため、境界標として認められません。

しっかりした境界標が現地に存在し、それが地積測量図と一致することで、初めて敷地境界線としての信頼性が確立されるのです。

④事前に境界標を確認しておく

土地の境界立会いに際して、準備をせずに臨むのは避けるべきです。境界確定が必要になった時点で、地積測量図に基づいて境界標が正しく設置されているかを、事前に確認しておくことが重要です。

もし不一致があった場合は、土地家屋調査士に相談し、その理由をきちんと把握した上で、隣地所有者との協議に臨むようにしましょう。これにより、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

⑤筆界確認書を作成する

土地の境界立会いに際して、準備をせずに臨むのは避けるべきです。境界確定が必要になった時点で、地積測量図に基づいて境界標が正しく設置されているかを、事前に確認しておくことが重要です。

もし不一致があった場合は、土地家屋調査士に相談し、その理由をきちんと把握した上で、隣地所有者との協議に臨むようにしましょう。これにより、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

⑥日頃のコミュニケーションも大事

土地の境界トラブルの中には、境界確定に十分な証拠が揃っているにもかかわらず、隣地の所有者が根拠のない問題を指摘し続け、確定に同意しない場合があります。

境界標が正当であれば、訴訟による解決も可能ですが、その過程で多くの手間と時間がかかり、最終的に大きな不利益を被ることになりかねません。

このようなケースの背景には、日頃のコミュニケーション不足が影響していることも少なくありません。感情的な対立が土地の売却に支障をきたさないよう、日頃から隣地所有者と良好な関係を築いておくことが重要です。

筆界特定制度で筆界トラブルが解決できる

筆界トラブルを解決する方法の一つとして、筆界特定制度があります。
これは、時間のかかる裁判を避け、法務局の手続きを通じて筆界トラブルを解決するための制度です。
具体的な内容を見ていきましょう。

①筆界調査委員の調査

筆界特定制度の申請が土地所有者によってなされると、法務局の特定筆界調査官が最終的な筆界の特定を行います。この過程で、土地家屋調査士や弁護士で構成される筆界調査委員が重要な役割を果たします。

委員たちは、法務局や自治体が保管する関連資料を精査し、実地調査や測量を実施します。さらに、当事者からの聞き取りも行い、公平な解決策を模索します。

これらの調査結果と専門的見解に基づいて、特定筆界調査官が最終判断を下すという流れになっています。

②裁判よりも早く解決できる

2006年に導入された筆界特定制度は、従来の裁判方式と比べて大幅な改善をもたらしました。かつては小規模な土地争いでさえ、裁判で解決を図ると数年を要し、多額の費用がかかりました。一方、新制度では平均10〜12ヶ月で決着がつき、迅速な問題解決を実現しています。

③ただし所有権の解決にはならない

筆界特定制度の目的は筆界の確定にありますが、土地の所有権の範囲を特定することはできません。このため、トラブルが所有権と筆界の食い違いから生じている所有権争いの場合、筆界特定制度を使って解決することはできません。

まとめ

日常生活では、隣地との境界を意識することも問題になることも少ないですが、いざ土地を売却しようと調べた際に、境界に関する大きな問題が発覚することがあります。このような問題は、トラブルに発展しやすいです。

土地の売却を進めると、状況が一刻を争うため、境界トラブルに対処する時間がないと感じることが多いです。そのため、不本意ながら相手の主張を受け入れ、早期に解決を図ろうとしてしまうことがあります。

つまり、売却直前に境界確定を行うと、土地所有者にとって不利になる可能性が高いのです。現在、自己所有地の境界に不安がある場合は、土地の売却を検討し始めた時点で早めに解決に取り組むべきです。しっかりと準備をして、無理な妥協を避けるためにじっくり対応しましょう。

また、土地の売却予定がない方も、一度地積測量図と自宅の境界標が一致しているか確認することをお勧めします。

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