177.親族間不動産売買の落とし穴と対策

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。

経済的な支援や、相続問題の未然防止などを目的として、親子や親族の間で不動産売買が行われることは珍しくありません。
贈与や相続と異なり、売買には独自の利点があるためです。時価での適正評価が可能なので、将来的な相続税の負担を抑えられます。

また、売買代金の受け渡しを通じて資金の移転もできるため、子世代の生活費や事業資金の確保にも役立ちます。
そこで今回は、贈与税などの税金知識も踏まえた上で、このような親族間の不動産売買における具体的な注意点を、詳しく解説していきたいと思います。

そもそも親子間で不動産売買はできる?

親子間で不動産を売買する方法があります。親子間売買と聞くと違和感を持つ方もいるかもしれませんが、
一般的な方法で売買することは法律上何も問題ありません。

あまり知られていませんが、生前贈与や相続以外の選択肢となります。

①親子間(親族間)売買

親子間で不動産を売買する際のメリットは、いつでも実施できる点にあります。

一方で、デメリットとして相続よりも費用がかかること、
そして何より子側に購入資金がない場合は実行できないことが挙げられます。

②生前贈与

メリットとしては、いつでも不動産売買ができることが挙げられますが、

デメリットとして名義変更に伴う登録免許税などの流通税と、
贈与税負担が他の方法に比べて大きくなる点が指摘されます。

③相続

メリットとしては、親から子への名義変更時の登録免許税等が最も安価に済むことが挙げられます。

一方、デメリットとして、親が生存中は名義変更ができない点があります。

親子間売買が選択される背景には、その特徴から生まれる様々な動機があると考えられます。

●親(売主)の動機

相続をめぐるトラブルを避けたい、愛着のある実家を家族に残したい、住宅ローンの返済が難しくなったなどが、
親子間売買を選択する主な動機として考えられます。

●子(買主)の動機

親から不動産購入を要請された、親の認知症発症リスクがある、実家に住みたいという願望など、子側からの動機も親子間売買に影響しています。

親子間で不動産売買できないケースはある?

基本的には親子間での不動産売買は可能ですが、一定の場合には認められません。不動産売買は法律行為であり、本人の意思能力が前提となります。このため、名義人に認知症がある場合は、本人が希望していても取引は許可されません。親が認知症になれば判断能力がないと見なされるため、親子間売買はできなくなる可能性があります。認知症の兆候が見られ始めたら要注意です。診断が出る前に売買を終えておかないと、所有権の移転ができなくなってしまいます。

親子間・親族間の不動産売買は簡単にできる?

不動産の個人間売買では詐欺などのトラブルリスクがあるため、通常は不動産会社の仲介を経ますが、親子間取引ではそうした懸念が少ないことから、直接取引が可能です。ただし、仲介手数料は不要になる反面、専門知識の習得が欠かせません。適正な手続きを経ずに脱税行為と見なされるリスクを避けるためにも、不動産や税金の知識を身に付ける必要があります。

親子間・親族間で不動産売買するメリット

親子間・親族間で不動産売買を行うメリットは、以下の5つが挙げられます。

①不動産相続で揉めずに済む

相続による不動産の継承では、現金のように簡単に分割できないため、遺産分割協議でトラブルになりやすい点が問題です。例えば物理的分割や共有化すれば、不動産の価値が大きく低下してしまいます。このため、親が生前に不動産を売却して現金化しておくことで、相続トラブルのリスクを大幅に下げられます。ただし、現金化すると相続税額が増える可能性もあるため、事前に専門家に相談しておくことが賢明です。

②「贈与」より「不動産売買」の方が税率が低い

生前贈与では不動産評価額に応じて高い税率の贈与税がかかりますが、
不動産売買の場合は買主側の不動産取得税や売主側の譲渡所得税の方が税率が低いため、税負担を大幅に軽減できます。

③愛着のある家を家族に受け継ぐことができる

相続による不動産移転では、必ずしも望む人物に所有権が移らないリスクがあります。

生前贈与も家族からの異論で実行できないことがあります。
遺産分割協議で揉めれば、結果として愛着のある実家を売却し現金化せざるを得なくなる可能性があります。

しかし、親子間売買なら不動産は現金化するだけで、実質的には親の資産も減らず、他の相続人の不公平感も避けられます。
こうして愛着のある我が家を次世代に引き継げるのです。

④売主は売却後も自宅に住み続けることができる

親子間不動産売買では、売却後も親が居住し続けられるという大きなメリットがあります。例えば、住宅ローン滞納で実家の任意売却を余儀なくされた場合、子どもに売却し、その代金で住宅ローンを完済することができます。その上で、子どもが所有者、親が借家人となれば、親は転居する必要なく実家に住み続けられます。

⑤外部に経済状況を知られずに済む

住宅ローン滞納で任意売却や競売を強いられた場合、自宅の売り出し広告や競売情報の公表によって、
近所や知人にその事実が知れ渡ってしまいます。

しかし、親子間での売買であれば、そうした広告や手続きを経ずに済むため、
第三者に事実が知られることなく住み続けられるというメリットがあります。

親子間・親族間で不動産売買するデメリット

逆に、親子間売買には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

①売買の手続きが曖昧になりやすい

親子間の不動産取引では、契約書の作成を怠ったり、実際の金銭授受に関係なく価格設定をおざなりにしたり、名義人確認や名義変更を怠るといった問題が起こりがちです。

しかし、売買と生前贈与は金銭のやり取りの有無で区別されます。

金銭授受の証跡がないと税務署は生前贈与とみなし、高額の贈与税や加算税が課されるリスクがあります。
極端な安値売買でも差額が贈与とみなされかねません。また、事前の名義確認と売買後の名義変更は必須です。

これらを怠ると支払い金額が贈与とみなされたり、他の相続人から売買そのものを認めてもらえなくなる恐れがあります。

②税金の特例「3,000万円の特別控除」が使えない

マイホーム売却時の3,000万円特別控除は、一般の買主には適用されますが、買主が親族であれば対象外となり、
高額な譲渡所得税がかかるリスクがあります。

通常の売却であれば控除が効いて譲渡所得税は低額かゼロ円で済むはずです。

親子間・親族間で不動産売買をする際の手順

親子間での不動産売買は基本的に通常の売買と同じ手順ですが、最も重要なのは「不動産の相場調査」と「売買契約書の作成」です。慎重に進めないと、贈与税の対象となる可能性があるため、注意が必要です。 売買の流れは以下の通りです。

①登記簿謄本の取得

登記事項から、不動産の現在の所有者が誰であるかを調べます。また抵当権などの他の権利が設定されていないことを確認します。

②不動産の価格を調べる

不動産価格を調べるには、不動産会社に査定を依頼したり、不動産鑑定を行ったりする方法があります。親子間売買では、親が子どもの負担を減らすために市場価格から離れた価格を設定することがあり、その結果、贈与税の対象となることがあります。これを避けるためにも、市場価格の調査は重要です。

③名義変更を忘れずに行う

売買契約が締結したら、速やかに不動産の名義変更を行うことが重要です。これを怠ると、相続時に不要なトラブルを引き起こす可能性があります。また、税務署に対して真の取引であることを証明するための証拠にもなります。

そのため、売買契約の締結前に、登記簿謄本、戸籍謄本、住民票などの書類を取得し、現在の不動産の名義人が誰であるか確認してください。

もし親以外の人物が所有者であった場合、その経緯を確認し、必要な調整を行った後、親の名義に変更する必要があります。また、親の住所が現在と異なっている場合は、先に住所変更の手続きを進めてください。

④住宅ローンの審査が通りにくい

一般的な住宅購入とは異なり、親子間売買では住宅ローンの審査が厳しくなります。これは税金逃れの疑いが持たれたり、保証会社の信用を得にくいためで、高い確率で融資を断られます。

最後の段階で融資が不可能になると、今後の予定が大きく狂ってしまうため、まずは金融機関に相談することが重要です。

また、買主である子が住まずに親が住み続ける場合、自己居住を目的とした住宅ローンの条件に合わないため、融資を受けることができません。

融資が受けられない場合、手持ちの現金で購入する方法がありますが、多くの人はまとまった現金を用意できないでしょう。この場合、比較的簡単な「生前贈与」や「通常の相続」を検討することが必要です。

生前贈与では受け取る側に贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を利用すれば贈与税を軽減できます。また、相続税も不動産の価額によっては大きな負担にならないこともあります。

必ずしも売買が最善の方法とは限りません。他の選択肢も検討し、無理のない判断をしてください。

⑤課税の可能性があることを認識しておく

親子間の不動産取引においても、売却額に応じて譲渡所得税や不動産取得税が課税される可能性があることを理解しておきましょう。

まとめ

親子間で不動産を売買することは可能ですが、親子だからといって手続きを曖昧にすると贈与税の対象になる可能性があります。

市場の相場に沿った売却価格を設定し、一般の取引と同様のレベルの売買契約書を作成して契約を結ぶことが重要です。

親が住宅ローンの返済に苦しんでいる場合、親子間で不動産を売買することで、親は自宅に住み続けることができます。ただし、住宅ローンの融資は期待できないため、資金調達が最大の課題となります。

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