149.不動産を移す時、「譲渡」と「贈与」どっちがいい?~中編~

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。

前回、私たちは不動産を他人に移す方法として3つのオプションを紹介しました。

これらは、生前の有償「譲渡」、生前の無償「贈与」、そして遺言や遺産分割による死後の「相続」です。
今回は、親が子に不動産を譲る際に最適な選択肢について、各方法の注意点や税制面を掘り下げて考えていきます。

不動産を「譲渡」する時の注意点

不動産の「譲渡」とは、対価を受けて不動産の所有権を他人に移すことです。たとえ親子間であっても、代金が交わされるとこれは売買とみなされ、譲渡となります。この不動産譲渡の際に気を付けるべきポイントは何でしょうか?

〈注意点〉「所得税」と「住民税」が課税される

「不動産を売るとき、その売却から生じる利益があります。これを「譲渡所得」と称し、この所得には所得税と住民税が課されます。
これらの税金を合わせて「譲渡所得税」と一般に呼びます。

「所得税」と「住民税」の計算方法

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

※収入金額=売却金額
※取得費=不動産購入時の金額とその際の諸費用の合計
※譲渡費用=売った時の諸費用

所得税と住民税の税額は、上記計算式で算出された譲渡所得金額に、不動産の所有期間に応じた税率を乗じて計算することで求めることができます。
なお、税率は不動産を所有していた期間によって異なります。

不動産を譲渡した年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に分けられます。

それぞれの税率は次のとおりです。

区分所得税復興特別所得税住民税
長期譲渡所得15%0.315%5%
短期譲渡所得30%0.63%9%

短期的に土地の転売を重ねて利益を得る、
いわゆる”土地転がし”を抑制するため、短期間での譲渡には高い税率が設定されています。

不動産を「贈与」する時の注意点

贈与」とは、不動産を他人に無償で移すことを指します。普通、これは名義人が生存中に親族や他者への「生前贈与」として行われます。

しかし、遺言による法定相続人以外への不動産の贈与、いわゆる「遺贈」も一般的です。不動産の贈与に際して注意すべき点をここで紹介します。

〈注意点1〉「贈与税」が課税される

不動産を贈与によって取得する場合、通常は贈与税がかかります。この理由から、単に名義変更を望む人には贈与は適していません。
なぜなら、贈与税は相続税よりも高額になる可能性があるからです。

また、所有権移転の際に必要な「登録免許税」も、相続の場合の方が低くなります。
では、贈与が適しているのはどのようなケースでしょうか。
それは、税金の支払いを受け入れ、不動産の名義変更が必要な場合です。例えば、子供に家賃収入を与えたい場合や、相続による争いを避けたい場合などが挙げられます。

〈注意点2〉「登録免許税」が課税される

不動産を登記する時、登記を受ける人には「登録免許税」が課税されます。
不動産の入手方法によって、税率は以下のように変わります。

贈与は、相続の場合の5倍もの税金がかかることが分かります。

  • 売買・・・・・・・・・・・・・・・・・・不動産の価格×2%
  • 相続等(法人の合併or共有物の分割)・・・不動産の価格×0.4%
  • 贈与(交換・収用etc..)・・・・・・・・・不動産の価格×2%

「贈与税」の計算方法

贈与税は、贈与を受けた人に課される税金です。この税金は、1月1日からその年の12月31日までに受けた贈与財産の総額から計算されます。

1年間に贈与を受けた財産の合計額基礎控除110万円基礎控除後の課税額

上記で求めた課税額に所定の税率を乗じて贈与税を計算しますが、税率と控除額は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」で異なります。

【一般贈与財産とは

一般贈与財産とは、父母や祖父母から未成年(18歳未満)の子や孫へ贈与する財産や、夫婦間・兄弟姉妹間・他人などへ贈与する財産です。

税率と控除額は次の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円以下
400万円以下20%25万円以下
600万円以下30%65万円以下
1,000万円以下40%125万円以下
1,500万円以下45%175万円以下
3,000万円以下50%250万円以下
3,000万円超55%400万円以下

【特別贈与財産とは】

特例贈与財産は、直系尊属(祖父母や父母など)から、18歳以上の者(子・孫など)への贈与財産のことをいいます。

税率と控除額は次の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下
400万円以下
600万円以下
1,000万円以下
1,500万円以下
3,000万円以下
4,500万円以下
4,500万円超

特例贈与財産は、一般贈与財産に比べて税率が低く、かつ控除額が高く設定されており、優遇されています。

不動産を「相続」する時の注意点

不動産の相続とは、亡くなった人の土地や建物の権利を特定の人が引き継ぐことをいいます。

相続で不動産を引き継ぐ場合、どのような点に注意が必要なのでしょうか。

〈注意点1〉相続税が課税される

相続税は、不動産を含む遺産相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合にかかる税金です。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×相続人の人数)」で算出でき、
この額を超えると相続税の申告が必要になります。

例えば、相続人が妻と子ども2人の計3人の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。

相続財産が4,800万円を超える場合は相続税の課税対象となり、4,800万円以下であれば相続税はかかりません。

〈注意点2〉登録免許税が課税される

贈与の注意点でも触れた通り、不動産登記を変更する際には登録免許税を納める必要があります。
相続の場合は、不動産価格の0.4%が課税されます。

「相続税」の計算方法

相続税は、不動産を含む遺産相続財産の総額に応じて納めます。税額は、次の計算式で課税遺産総額を算出し、金額に応じた税率を乗じて計算します。
正味の相続財産-(基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人の数)=課税遺産総額

【課税遺産総額に乗じる税率】

基礎控除後の課税価格税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円以下
5,000万円以下20%200万円以下
1億円以下30%700万円以下
2億円以下40%1,700万円以下
3億円以下45%2,700万円以下
6億円以下50%4,200万円以下
6億円超55%7,200万円以下

相続税は、贈与税に比べて税率が低く設定されている上に除額が大きいため、税額は大きく軽減されます。

まとめ

不動産を譲る際には、譲渡、贈与、相続のいずれかの方法を選びますが、それぞれの方法で異なる税金が課されます。

一般的には贈与税の方が相続税より高いことが多いですが、
経済的状況や家族の状態に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。

受け取る側が将来税金で困らないよう、慎重に選択することが重要です。

次回は、注意すべき税金のポイントと、知っておくべき控除制度について説明します。

※コラム内容は掲載当時の最新情報となり、現在改正されている場合があります

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