176.自然災害のリスクを伴う不動産売却時の留意点とは?

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。

日本では毎年のように自然災害が発生するため、不動産を売却する際に、土砂災害、洪水、津波などの危険が予測される地域は避けられがちです。こういった被害が発生しやすい地域の土地や家をスムーズに売却するにはどうすればよいでしょうか。
売却活動で必要な工夫や注意点について説明します。

売れにくいエリアの物件売却は「買取」で解決

自然災害のリスクは不動産売却にとってネガティブな要因です。
買主は少しでも安全な地域を選びたがるため、被害を受けやすいエリアの土地や家は売れにくいのが現実です。

しかし、売却できないわけではありません。
災害リスクのある物件の活用に精通した専門性の高い不動産会社であれば、直接購入してくれる可能性があります。

土砂災害のリスクが高い家・土地とは

土砂災害とは、急斜面で豪雨や地震によって土石流や地滑り、崖崩れなどが発生する現象です。このリスクが高い地域は、住民の命に危険が及ぶ恐れがあるため、土砂災害警戒区域として指定され、いくつかの制限が設けられています。

土砂災害のリスクがある家や土地には、具体的にどのような制限があるのか見ていきましょう。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

土砂災害の危険があるエリアは、土砂災害防止法に基づき2段階で指定されています。
その一つが土砂災害警戒区域(イエローゾーン)です。

イエローゾーンに指定された土地には特別な建築制限はないものの、安全とは言えないエリアなので、市町村が作成するハザードマップに表示され、災害時の避難場所などが設定されています。

不動産取引の際には、不動産会社が重要事項説明でイエローゾーンに指定されていることを告知する義務があります。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)

もう一つの指定区域が、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)です。

レッドゾーンはイエローゾーンよりも危険度が高く、利用に関してさまざまな制限が課されています。

宅地の売却には都道府県知事の許可が必要で、崖崩れを防ぐ補強や建物を強固にするなどの対策が求められます。これらの対策を行わなければ許可が下りないこともあり、そのための費用が発生します。

また、危険が迫っている場合には、都道府県知事が区域外への移転を勧告することがあります。

イエローゾーン同様、重要事項説明の際にはレッドゾーンに指定されていることを告知する義務があります。

造成宅地防災区域

宅地造成等規制法に基づき、地震等によって地盤や地層が滑動し、災害が発生する恐れがある造成宅地が「造成宅地防災区域」に指定されます。
この区域には、自然の傾斜地を切り崩した宅地や人工的な崖地が含まれます。

区域内の宅地所有者は、都道府県知事から擁壁設置などの防災措置を求められることがあり、
宅建業者はこの指定を重要事項として説明する義務があります。

近くに崖がある家・土地

土砂が安定を保てる最大の角度、いわゆる安息角は理論上30度とされています(土地条件・土質により異なる)。

崖近くの家は、崖崩れによる土砂流入の危険があるため、崖の高さの2倍以上離れた場所に建てるべきです。
これは、万一の崖崩れ時に、土砂から居住者の安全を守るためです。

洪水のリスクが高い家・土地とは

洪水の危険があるエリアは、土砂災害のような法的なエリア指定はありませんが、2020年8月28日以降、水害ハザードマップでの所在地確認が重要事項説明で義務付けられています。

過去に洪水があったエリアでは、再度水害が発生する可能性があります。過去に床下・床上浸水の被害があった事実を隠すと、売却後にトラブルに発展する可能性が高いため、売却時には重要事項説明で被害を告知するのが一般的です。

津波のリスクが高い家・土地とは

津波による甚大な被害が想定され、住民の生命・身体に高い危険が及ぶ可能性のあるエリアは、津波防災地域づくりに関する法律に基づき、都道府県知事により津波災害警戒区域に指定されます。
この区域は、避難場所や経路の確保など、特別な警戒避難体制の整備が必要とされています。
オレンジゾーン(津波災害警戒区域)には建築制限はありませんが、レッドゾーン(津波災害特別警戒区域)では、想定浸水位以下に居住部屋を設けられないなど、厳しい制限があります。不動産取引では、両区域の指定を重要事項として説明する義務があります。

災害リスクが高い家・土地を売却する際の注意点

自然災害のリスクがある家や土地を売却する場合、
災害の種類によってはリスクについて説明しておかないと、
売却後に買主から契約不適合を指摘される可能性があります。

どのような点に注意をすればよいのかは、災害リスクの種類によって異なります。具体的に解説していきましょう。

①イエローゾーンにある物件を売却する際の注意点

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は、土砂災害が発生した際に避難を余儀なくされる可能性のあるエリアです。売却する物件がこのエリアに該当する場合は、買主に対して重要事項説明でその旨を告知する義務があります。

その物件を購入した時点で指定されていなくても安心できません。イエローゾーンは2017年3月31日時点で全国に487,899区域(レッドゾーンは331,466区域)指定されており、購入後に指定される可能性もあります。

まずは売却活動を始める前に、所有物件がイエローゾーンやレッドゾーンに指定されていないか確認しましょう。

イエローゾーンは指定区域外の不動産よりもリスクがありますが、特別な建築規制はなく、売却価格も相場より大きく下がることはありません。

しかし、自然災害が多発している昨今、こうしたリスクに敏感な買主が多いのも事実です。

売却の際には、避難場所や避難経路をしっかりと把握し、安心して住める点を誠実に伝えることが必要です。場合によっては、売却価格をある程度低めに設定することも検討しましょう。

②レッドゾーンにある物件を売却する際の注意点

レッドゾーンに指定される区域は、土砂災害が発生した際に住民の生命に重大な危害が及ぶ恐れのある場所です。このため、災害リスクが高いため、売買契約の前段階で都道府県知事の許可が必要です。

また、建て替えをする際も、予想される災害に耐える構造にしなければならず、建築には条件が付くため、費用が増加します。

そのため買い手を見つけるのが難しく、売却価格は相場よりも大幅に下がります。

レッドゾーンの物件は、不動産会社が土砂災害特別警戒区域の特性を理解していないと、売却後にトラブルが発生する可能性があります。そのため、売却の際は、レッドゾーンの売却実績があり信頼できる不動産会社に仲介を依頼しましょう。

〈売却が難しければ「買取」の選択を〉

レッドゾーンにある家は、建築規制が厳しく、リスクも高いため、仲介での売却は大幅に価格を下げても買い手がつきにくいです。

値下げしても時間が経っても売れない場合は、買取専門の不動産会社に依頼してみるのも良いでしょう。

買取専門の不動産会社は、建物をリフォームして再販売するノウハウを持っています。

市場で敬遠されがちなレッドゾーンの物件でも例外ではなく、活用できれば買い取ってもらえます。仲介で売れない、相談しても良い返事がない場合は、ぜひ相談してみてください。

③造成宅地防災区域にある物件を売却する際の注意点

造成宅地防災区域内では、崖崩れや土砂流出といった災害を防ぐために、造成宅地の所有者は擁壁の設置など必要な措置を講じる必要があります。さらに、都道府県知事は所有者に対して是正勧告や改善命令を出すことが可能です。この区域内にある物件を売却する際には、重要事項説明でその旨を告知する義務があります。説明を怠ったり不十分な場合、売却後に契約不適合による損害賠償や契約解除になる可能性があります。

④近くに崖がある物件を売却する際の注意点

崖の近くは、地震や豪雨の際に崖崩れが起こる可能性があるため、建築規制が設けられています。規制内容は都道府県や自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。

例えば、東京都建築安全条例では次のように定められています。

『第6条第2項 高さ2メートルを超える崖の下端から水平距離が崖の高さの2倍以内の場所に建築物を建てる場合、2メートルを超える擁壁を設置しなければならない。』

東京都では、自己敷地内に2メートル以上の擁壁を設ければ建築が可能です。

一般的に、崖地の下にある土地は、崖の高さの2倍以内の範囲で何らかの規制がかかります。自治体によっては、この範囲での建築が認められない場合もあります。

売却予定の土地が条例に違反していないか、事前に管轄する自治体の条例を確認して、規制を正確に把握する必要があります。

このような条例の規制対象となっている土地は、相場よりも安くなることが多いです。擁壁の設置費用を考慮した価格設定などで、スムーズな売却を目指しましょう。

⑤洪水のリスクが高い物件を売却する際の注意点

過去に洪水の被害に遭った家でも、都市部など利便性の高いエリアであれば影響はあまりなく、ほぼ相場の価格帯で売却が可能です。

なぜなら都市部においては、駅からの距離や周辺環境など、利便性の方が優先されるからです。

ただし、売却する際には次のポイントに注意しましょう。

〈洪水の被害履歴は告知が必須〉

過去に洪水が発生した地域は、再び洪水の被害に遭う可能性があります。そのため、売却後のトラブルを避けるためにも、重要事項説明でしっかりと告知しましょう。

特に土砂災害警戒区域の場合、不動産会社はその情報を把握しており、告知義務があります。しかし、洪水被害については不動産会社が知らないケースもあります。

建て替えやリフォームで洪水被害の痕跡がなくなっていたとしても、売主は必ずその事実を伝える必要があります。告知しないまま売却し、後で洪水の履歴が判明すると、契約不適合として損害賠償を請求される恐れがあります。

洪水被害の告知は義務化されています。

「自分しか知らないから黙っていても問題ない」「売却価格に影響するから」といった理由で事実を隠すことはできません。必ず重要事項説明で告知してください。

〈インスペクションの実施でトラブル回避〉

洪水被害を受けた家は、補修工事を行っても構造部にダメージが残っていることが多く、見た目が元通りでも基礎が腐食する可能性がありますので注意が必要です。

売却後に不具合が発生すると、契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除を求められるリスクがあります。売却前に、専門家による既存建物状況調査(インスペクション)を実施し、住宅の劣化状況や欠陥を確認しておくと安心です。

隠れた瑕疵を事前に発見することで物件の信頼性が向上し、重要事項説明で買主に告知することで後のトラブルを避けることができます。

まとめ

土砂災害や洪水、津波などの災害リスクが高い不動産は、敬遠されやすく、売却が難しくなることがあります。

特に、土砂災害特別警戒区域や津波災害特別警戒区域のレッドゾーンに指定されたエリアは、建築制限が厳しいため、売却が長期化する傾向にあります。

売却をスムーズに進めるためには、買取専門の不動産会社に依頼する方法もあります。レッドゾーンのような物件でも、豊富なノウハウを持つ不動産会社なら、物件を活かして買取してもらうことが可能です。

イエローゾーンの物件は特別な建築制限がないため、一般の住宅と同様に売却できます。避難経路や避難場所を明示して、買主に安心してもらえるよう工夫しましょう。

自然災害の危険や被害履歴は、重要事項説明での告知義務があります。買主とのトラブルを避けるためにも、役所で自己所有地が規制対象かどうか確認し、正確に告知して売却しましょう。

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