112.名義人が違う不動産は売却できる?売却に必要な方法と手続きとは?
こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です
本来、不動産は名義人本人の意思がなければ売却できません。
しかし相続や所有者が亡くなるなど、何らかの理由で、自分の名義ではない不動産を売却したいという場合があります。
この記事では、名義人が異なる不動産は売却できるのか、それにはどのような手続きが必要なのかなど、具体的な方法や注意点を詳しく解説していきます。
名義人が違う事例とは?
不動産の名義人とは「所有者」のこと。今回取り上げるのは名義人が違うケース、つまり「不動産所有者ではない人」が売却の手続きを進める方法についてです。実は、こうした事例は珍しいことではありません。
具体的な事例をみていきましょう。
①家族が名義人である
祖父母や親など、高齢者が名義人となっている家は多いと思いますが、長期に渡る入院などで住み続けることができなくなり、家族が不動産を引き取ることがあります。
誰も住まない家を所有するのは大きな負担です。持て余し、売却したいと考えている人も多いでしょう。
しかし原則として不動産を売却できるのは名義人だけ。本人が認知症などで判断能力が乏しい場合は売却を進めることは困難です。
所有者が亡くなって相続の手続きをしない限り、不動産の名義はそのまま。たとえ名義人である祖父母や父母が亡くなって不動産を相続したとしても、自動的に名義人が自分に変わるわけではありません。
一般的には法定相続人が相続人になりますが、まれに法定相続人以外に相続する「遺贈」というケースもあります。名義人が自動的に変わることはないので、きちんと相続の手続きすることが必要です。
②共有名義で持ち分割合がある
夫婦や兄弟など、複数の相続人の共有名義になっていることもあります。
共働き夫婦の場合はそれぞれ住宅ローン控除が受けられるので、共有名義で家を購入していることが多いものです。
また兄弟間で相続する際に、例えば3人兄弟なら3分の1ずつ共同名義にしていることもあります。不動産の面積で分けているのではなく、所有権の割合がそれぞれ1/3ずつあるということなので、不動産は共有名義全員の共有物です。
他に、親子間で共有しているケースもあります。
③土地と建物で名義人が違う
土地と建物で名義人が異なる場合もあります。
例えば土地が妻で建物が夫名義だったり、建物は所有しているけれど敷地は借地、親が名義人の土地に子世帯が家を建てたといったケースです。これは決して珍しいことではありません。
ローン審査で問題がなければ、このような事例でも建物を建てることはできるからです。
売却は原則として名義人が行う
不動産を売却できるのは、原則として名義人本人だけ。名義人が明確な売却の意思を持って手続を進めることが重要です。
そうでなければ、「名義人が売りたいと言っている」という言葉だけで、親族などの代理人が勝手に売却する恐れがあるからです。
不動産売却はかなり高額な取引になることも少なくありません。そのため、たとえ親子であっても、名義人の許可なく大切な財産を勝手に売却することはできないのです。
とはいえ名義人が高齢で、本人が直接売却を進めることができないケースもあります。認知症などで判断能力が不十分な場合は、成年後見人の申し立てをすれば、代理人による売却が可能になります。
成年後見人になれるのは、配偶者や4親等以内の親族のほか、弁護士、司法書士、社会福祉士など専門知識がある人に限られます。
親子関係にあれば、親から子に名義人を変更すればスムーズに取り引きができます。
ここで注意してほしいのは、親が生存している場合です。
親が生きているうちに名義変更すると、「相続」ではなく「贈与」となり、相続よりも多くの税金を支払う可能性がありますので、気を付けましょう。
共有名義は持ち分を渡して名義の一本化を
次は、共有名義の不動産を売却する場合についてです。
夫婦や兄弟間の共有名義になっている不動産は、そのうちの一人が自分の持ち分を売却したいと思っても、分割された持ち分だけを購入したい人はまずいないでしょう。
問題となりやすいのは、離婚に伴い夫婦共有名義の不動産を売却処分する場合や、兄弟間でまとまった資金が必要なため売却したいというケースです。
赤の他人が共有名義の不動産を購入する例はほとんどありませんので、このような場合は「分割された名義を統一する」という方法が現実的です。
夫婦であれば合意を得て片方に統一し、複数で共有していれば自分の持ち分を共有者の誰かに代表してに購入してもらう、という方法があります。
ただし、必ずしも自分の持ち分を共有者に購入してもらえるとは限りません。
共有名義の不動産売却には全員の同意が必要
他の共有者の持ち分を購入するには、一時的にまとまった資金が必要になるため、資金の準備ができないこともあるでしょう。
その場合は共有者全員が売却を了承すれば、一つの不動産として第三者にまとめて売却することが可能です。「全員の同意」が必要ですので、1人でも反対していれば売却はできません。
原則として、共有名義人全員が集まって契約することが求められますが、名義人が遠方に住んでいたり高齢で判断が難しいといった場合は、名義人の誰かが代表して委任状を獲得し、売却することが可能です。
土地と建物で名義が違う場合は、名義を統一すると売りやすい
土地と建物で名義が異なる不動産でも、それぞれの所有者が個別に売却することは可能です。
例えば親が名義人の土地に子どもが家を建てた場合などは、親が土地だけを売ったり、子が家だけを売却しても、理論上は問題ありません。
とはいえ、土地だけを購入しても自由に土地を利用できる訳ではありませんし、建物だけを購入しても土所有者の申し立てによっては住み続けられない可能性も出てきます。
親子間なら名義が違っていてもほぼ問題はありませんが、赤の他人の場合は、このようなリスクのある物件は避けられがち。ニーズも相当限られるため、単独で売ることは可能でも現実的ではないのです。
やはり名義の異なる土地と建物は、名義人の片方がもう一方を購入して、名義人を一人にして売却するほうが需要はあるでしょう。
名義変更の手続き方法
売却や贈与のための名義変更は、基本的に次の手続きが必要です。
名義変更の申請場所は「法務局」です。
「司法書士」に手続きを依頼するのが一般的で、費用の相場は2〜3万円程度です。
名義変更に必要な書類を自分で作成できるなら、名義人本人が手続きを行っても問題はありません。
共有名義人がいて名義を一人に統一するには、「贈与」「譲渡」「相続」の3つの方法が考えられます。
①贈与で名義変更
贈与とは、持ち分を他の人に無償で譲渡することです。
共有名義が親族間の場合、持ち分を他の人に名義変更するためにお金をやりとりする売買は避ける傾向にあり、一般的には贈与を選択すること多いでしょう。
ただし、贈与を受けた人には「贈与税」がかかります。税率は贈与額に応じて変わるので、事前にしっかり確認しておきましょう。
中には贈与税を免れるために、相場よりも極端に安い価格で売買するケースがありますが、あまりにも安すぎると相場との差額が「実質的に贈与である」(みなし贈与)と判断されることがあるので、注意が必要です。
②譲渡で名義変更
最も一般的な名義変更は、金銭対価を伴って持ち分を譲渡する方法です。
この記事では共有名義部分の売買をテーマとしていますが、通常の不動産取引でも日常的に行われている名義変更の方法です。
譲渡は、譲渡した人(売主)に「譲渡所得税」が課される可能性があります。
③相続で名義変更
実際には相続が発生していたにもかかわらず、必要な手続きを行っていないために、亡くなった家族の名義のままになっていることがあります。
そのために改めて行うのが、相続の名義変更手続きです。
先にも説明した通り、事実上は相続を受けていても、自動的に不動産の名義人が変わる訳ではありません。相続人は自分が名義人となるための手続きをする必要があります。
相続には「相続税」が課されますが、贈与税よりも税率は低く、控除額も大きいため、よほど価値の高い不動産でない限り、高額な相続税が課せられる心配はありません。
名義変更の手続きの流れ
基本的な名義変更の手続きは、次のような流れになります。
1.必要書類の準備
2.書類作成・申請
3.名義変更完了
名義変更に必要な主な書類は次の通りで、代理人がいる場合には、他に委任状が必要です。
- 登記申請書
- 収入印紙
- 不動産権利証(登記識別情報)
- 印鑑証明書
- 住民票等(住所証明)
- 課税台帳(固定資産評価証明書)
- 登録免許税
名義変更に必要な費用
名義変更の手続きに必要な費用は、大きく分けて申請時にかかる「税金」と手続きに関わる「報酬」の2つがあります。
税金の中で特にで大きな負担となるのは、「登録免許税」です。税率は固定資産評価額によって異なりますので、事前に評価額を調べておきましょう。
一例を挙げると、固定資産評価額が2,000万円、贈与の名義変更の場合であれば、登録免許税は40万円となります。
また、司法書士へ支払う報酬の相場は、おおよそ5万円~10万円です。
もし名義人本人が自分で手続きした場合は、この報酬は発生しません。少しでも費用を抑えたいなら、自分で手続きする手もあります。
名義変更後に注意すべきポイント
名義変更後は、忘れずに確定申告を行いましょう。
贈与であれば「贈与税」、譲渡であれば「譲渡所得税」、相続であれば「相続税」があり、贈与、譲渡、相続のいずれの方法で名義変更をしても、税金が発生することがあります。
それぞれのケースで税金の算出方法や該当する特例措置が異なりますので、詳しくは国税局のホームページなどで最新情報を確認してください。
計算した結果、納めるべき税金が無いこともあります。
それでも他の収入があれば、すでに納めた(納めるべき)税金が戻る可能性があるため、確定申告をした方がいいケースもあります。確定申告をしなければ、払いすぎた税金があっても還付を受けることはできません。
確定申告の期間は、通常2月中旬から3月中旬です。受付期間のうちに、忘れずに申告しましょう。
まとめ
●被相続人が亡くなる直前まで住んでいた空き家を相続して売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除可能な「譲渡所得の特別控除の特例」という税制優遇を受けられます。
●空き家売却で税制優遇を受けられる空き家の条件として、昭和56年5月31日以前に建てられていること、被相続人が亡くなる直前まで住んでいたこと、相続後は事業用や居住用、賃貸用として使用していないことなどが挙げられます。
相続開始から3年が経つ年の年末まで、そして令和5年12月31日までに売却した場合が対象です。
●相続した空き家の売却時に税制優遇を受けるためには、売却の翌年に確定申告が必要です。
条件を満たしている空き家・売却であることを証明する書類をそろえ、相続人の住所を管轄する税務署へ申告しましょう。
●相続してから売却までの間に、空き家を賃貸や居住用として使用しては、特例が適用されなくなってしまうので注意!
適用期間は3年程ありますが、相続税の納付期限が先にきますので早めに売却をして納税用の現金を確保するのも良いでしょう。
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