売り出し価格の決め方
052 解説!売出価格の決め方
一般的な流れとしては、我々不動産会社から提示させて頂く査定価格を参考にして頂きながら、売主様に決めて頂くという流れです。
ただ、「査定価格を参考にして」という表現は今までにも何度かさせて頂きましたが、詳しく触れてはこなかったので、補足させて頂ければと思います。
ご自宅の売却であれば、査定のほとんどは「取引事例比較法」という手法で算出されています。
近所に似ている物件が過去に売れた価格を根拠として期待できる金額を算出する方法でした。
この査定方法で算出された価格を参考とする場合に知っておいていただきたいことがあります。
この査定方法には、実は2つの弱点があります。
1つ目の弱点は「適した事例が無いと精度が著しく下がる」です。
まずは事例の数が重要です。
複数件の適した事例があれば査定の精度は高まりますが、1件しかない場合には根拠としてはかなり弱くなってしまうのが難点です。
次に重要なのは事例の時期です。
おおむね一年以内が好ましく、2年以上前の事例を参照する場合は周辺相場の変動値なども加味したほうが良く、検討要素が増えてしまうこととなります。
2つ目の弱点は「旧売主様の売却理由は不明」です。
取引事例を蓄積するデータベースには基本的に旧売主様の売却理由は残りません。
例外としては自社のお客様であれば、自社の顧客情報内に履歴があるかもしれませんが、そうでなければ知る手段というのは基本的にはありません。
しかし、売却理由というのは価格に大きな影響を及ぼすものですから非常に重要な情報です。
例えば、とても売り急いでいた案件であれば相場よりも格安にしてしまっているかもしれません。
そのような事例を根拠として比較法を使ってしまうと、算出される査定価格も相場よりも低い「売り急ぐ場合の価格」になってしまいます。
これは逆もまた然りです。
通常よりも大幅な高値で成約できた事例を参照してしまうと、中々買い手がつかず売却期間の長期化を招く恐れがあります。
こうした弱点についても把握したうえで、査定結果を眺めて頂くと、今まではわからなかったことが見えてくるかもしれません。
また誤った判断を防ぐ助けにもなるかもしれませんので、ぜひ覚えておいてください。
ただ、ここまで得た情報をフル活用して、考えうる最適な答えを出したとしても、不動産売買というのは相手があって成り立つものです。
買い手側の事情、予算、タイミングによっては「最適」なだけでは適合しない可能性もあります。
極端な話、本当の最適は買い手がつくまでわからないのです。
しかしそうはいっても決めなければ始まりませんし、終わってみなければ結果もわかりません。
だからこそ、後悔をしない為に、明確な根拠をもって判断をする為に、判断材料となる情報と知識が重要となります。
過去の事例を参考にしつつ、ご自身の事情も加味し、競合についても把握して、価格を含む販売戦略を決めていくのです。
こうして並べてしまうと非常に大変な作業であることが改めて分かります。