買うよりも売る方が難しい

008 売ることは買うことよりずっと難しい

現在日本の中古不動産市場は買い手が強い市場です。
市場から見ても、売るのが難しいのです。
また市場もさることながら、もともと売買というのは「買う」よりも「売る」方が難しいのです。

例えば大人気のネットオークション。
誰もが安く買いたいと思います。
その場合は、商品を探して自分のほしい価格で入札して買うわけですが、「これ以上高い値段では買わない」と思えば「買わなくてもいい」という選択肢があるのです。
買う場合の判断基準は、買える価格をクリアすればいいのです。

しかし売る場合はそうはいきません。
なぜなら、まず「自分が買った価格」というものがあります。
売るということは、当然過去に買っているはずです。

例えば、10年前に買ったご自宅で当時は4000万円で購入。
今、売り出そうと査定をしたら2500万円にしかならなかった。
住宅ローン残高は3000万円。
売っても500万円の赤字が出る。
今500万円もの資金は手元にない…。
こうなった場合、不動産会社に支払う手数料や諸経費を考えても、最低3100万円前後で売らなければならないということになります。
これは「売りたい値段」です。

しかし、査定してもらった市場価格は2500万円。
これが「売れる値段」です。

住宅を買う場合は、自分自身の資金計画から「買える価格」さえ見きわめれば買えます。
また、売り出されている物件の市場価格も「買い手市場」であるため「買いたい価格」と「買える価格」の差があまりありません。
ところが、反対に売る立場に回れば「売りたい値段」と「売れる値段」の差が出てきてしまいます。そしてこれからも日本は中長期的に買い手市場と考えれば、この「売りたい値段」と「売れる値段」の差が縮まるとは考えにくいのです。

また、売る場合は必ず「売る理由」があって売ります。
そこに「いつまでに売りたい」と時間的制限がつく場合があるのです。
家を買う人で「○月までに家を買わないといけない」という相談は受けたことがありません。
法人の節税策の一環として「いつまでに不動産を買わなければいけない」と聞いたことがありますが、個人レベルではまずありません。
「売る場合」は「買う場合」と比べ、時間的制限に縛られることが多いのです。

また「中古不動産の売り手」の周りには、すでに売り出し中の物件、今後も供給が続く新築のマンション・戸建、住宅ローン破綻から売りに出されるであろう築浅の競売物件と、ライバルがいっぱいなのです。
住宅を買う前に勉強される方はたくさんいます。
しかし、自宅を売る前に勉強される方はあまりいません。
本来は、売却時こそ「売るためのノウハウ」を勉強する必要があるのです。
次回からその「ノウハウ」をご紹介します。

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