171.不動産売却の瑕疵担保責任とその対策方法

こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。

不動産の売買において、売主は物件の引渡し後も一定期間は瑕疵(不具合)に対する責任を負うことになっています。

この責任のことを「瑕疵担保責任」(または「契約不適合責任」)と言います。

馴染みのない言葉かもしれませんが、売主にとって無視できない重要な概念です。

今回は、この瑕疵担保責任とは具体的に何か、売主がどのような責任を負うのか、
そしてこの責任に備えるための対策について詳しく説明します。

不動産売却で注意すべき「瑕疵担保責任(契約不適合責任)」とは?

不動産の「瑕疵」とは、物件の不具合や欠陥のことを指します。
瑕疵担保責任とは、不動産の売買契約において、

売主が物件の引渡し後も一定期間、物件の瑕疵に対する責任を負うというルールのことです。

具体的には、たとえば物件の引渡し後に、天井の一部から雨漏りがあることが判明した場合などが該当します。
このような瑕疵があれば、買主は瑕疵担保責任に基づき、修理に要した費用などの損害賠償を売主に請求することができるのです。

売主が物件の瑕疵を認識していたかどうかは関係なく、客観的に瑕疵があれば責任を負わなければなりません。

ところが、2020年4月1日に民法が改正されたことにより、この瑕疵担保責任のルールが変更になりました。改正後は「契約不適合責任」という名称に変わり、売主が負う責任の範囲がさらに広がることになったのです。

従来の瑕疵担保責任では、売主が責任を負うのは「隠れた瑕疵」、
つまり売買当時は気づかれていなかった不具合に対してのみでした。
しかし新しい契約不適合責任では、売主の認識の有無は問われません。

契約の内容と異なる物件を引き渡してしまえば、それ自体が債務不履行となり、売主は損害賠償責任を負うことになります。

例えば「雨漏りのない物件」を売買する契約だったにもかかわらず、実際に引き渡された物件に雨漏りがあった場合、
改正前の瑕疵担保責任ではその瑕疵が売買時に隠れていれば責任が発生しましたが、改正後の契約不適合責任ではその点は無関係に、単純に契約内容と実際の物件が異なっていれば責任が発生するということです。

このように、売主が負う責任がより広範になったと言えるでしょう。

瑕疵の具体的な内容とは?

不動産における瑕疵(不具合、欠損)には、4つの分類があります。
それぞれ具体的に解説していきます。

物理的瑕疵

建物や土地の物理的な不具合、故障、損壊など。

  • 雨漏り
  • 水漏れ
  • シロアリ被害
  • 老朽化による腐食
  • 地中に不要物が埋まっていた

など

法律的瑕疵

建築基準法や消防など、現行の法律に適合していない状態。

  • 再建築不可物件
  • 建築制限がある
  • 建ぺい率オーバー

など

心理的瑕疵

買主の心理的な負担になるような事実や状態。

  • 建物内で過去に自殺や事故死が起きている

など

環境的瑕疵

不動産の周辺環境における不具合や負担となるような状態。

  • 周辺に暴力団事務所や火葬場、産業廃棄物処理場などがある
  • 周辺の施設や賑わいによる振動や騒音がある

など

「契約不適合責任」では売主はどんな責任を負っている?

物件の引渡し後に、契約内容と実際の物件が異なる契約不適合があれば、買主は売主に対して様々な請求ができます。

【1】補修工事や工事費用の請求ができる
物件に雨漏りなどの不具合があれば、買主は売主にその補修工事を求めたり、すでに買主が補修工事を行っている場合はその費用を売主に請求できます。売主の責任の有無は関係ありません。

【2】補修してくれない、補修できない場合は、物件代金の減額請求ができる
売主が補修を行わない、または補修が不可能な場合、買主は支払った物件代金の一部減額を求めることができます。この減額額は、不具合のない物件の価格との差額になります。売主の責任を問うことなく請求可能です。

【3】補修してくれない、補修できない場合は、契約の解除ができる
重大な契約不適合があり、売主が補修に応じない場合、買主は契約を解除し、すでに支払った代金の返還を求めることができます。この場合、売主は手付金倍返しの措置を取らなければなりません。

【4】売主に責任がある場合は、損害賠償請求ができる
契約不適合が売主の責任によるものである場合、買主は損害賠償を請求できます。従来の瑕疵担保責任では、無過失の場合は請求できませんでしたが、改正後は売主に帰責事由がある限り請求が可能です。

また、請求できる損害の範囲も広がりました。従来は「信頼利益」のみでしたが、新しい契約不適合責任では「履行利益」の賠償も認められます。信頼利益とは契約締結の準備費用などですが、履行利益は物件が適切に引き渡されていれば得られたはずの利益を指します。

このように、契約不適合責任は売主の責任を問う側面と、契約の履行を求める側面の両方があり、買主は物件の不具合に対してさまざまな請求ができるようになりました。売主としては重大な契約不適合に該当しないよう、十分な注意が必要不可欠です。

契約解除の種類や手付金の扱いについては「不動産を売却契約する際に注意したいこと」でも詳しくご紹介しています。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う期間はいつまで?

民法の規定では、売主の瑕疵担保責任・契約不適合責任の期間は、買主が不具合を知ってから1年間となっています。

ただし、当事者間の合意があれば、この期間を変更することが可能です。
中古物件取引においては、不具合の原因が売却前か後かを判別するのが困難なため、

個人間の売買では通例、売主の責任期間を物件引渡し後2〜3か月程度に短縮することが一般的な慣例となっています。

不動産売却時の契約不適合責任(瑕疵担保責任)への対策方法

瑕疵担保責任から契約不適合責任へと売主の責任が変更され、その範囲が広がったことで、物件引渡し後に補修工事が必要になったり、契約解除に至ったりする可能性が高まりました。

そうなれば売主側に予想外の費用負担が発生するため、このようなリスクに備えた対策を講じておくことが賢明です。

物件の状態を調査し、契約書へしっかり記載する

不具合のある不動産を売却する際は、その状況を売買契約書に詳細に記載しなければなりません。

買主がその不具合を理解し承諾したうえで購入すれば、契約不適合責任は問われません。
設備の有無や状態を示す「付帯設備表」、その他の不具合内容を記した「告知書」の作成も欠かせません。

書類は通常不動産会社が作成しますが、売主も内容と実際の物件状況に相違がないかを確認する必要があります。

加えて、住宅診断士によるホームインスペクションを受けることが賢明な対策となります。

既存住宅売買瑕疵保険に加入する

物件状況をどれだけ細かく契約書へ記載したとしても、

不具合を見落とすことを完全に防ぐことはできません。
契約不適合責任にもとづいて、
請求された補修工事にかかる費用をカバーする保険へ加入するのもひとつの方法です。

補修費用や補修工事に付随してかかる調査費用、引っ越し、仮住まい費用などを補償してくれます。

不動産会社独自の保証サービスがある会社を選ぶ

契約不適合責任に備えて、一部の不動産会社が独自の保証サービスを提供しています。

この保証の補償内容や期間は会社によって異なりますが、
一般的には限度額200~500万円、期間2年程度が設定されています。

例えば、契約書で売主の契約不適合責任期間が3か月と定められている場合、最初の3か月は売主に対する保証、
その後は買主に対する保証となります。買主にとっても、長期間にわたり不具合に関する保証を受けられるメリットがあります。

まとめ

不動産売買における瑕疵担保責任とは、

売主が物件の引渡し後も一定期間、物件の不具合に対する責任を負うことを指します。

売却時には気づかれなかった隠れた瑕疵が後になって発覚した場合、売主は債務不履行として損害賠償責任を問われます。2020年4月の民法改正により、この制度は「契約不適合責任」と名称を変え、より広範な売主責任が課されるようになりました。契約内容と実際の物件が異なる場合、補修や損害賠償の責任を売主が負うことになるのです。
こうした責任に備えるため、不動産売却時には専門家による物件状態の綿密な調査を行い、

その内容を契約書に詳細に記載することが重要です。

また、瑕疵担保責任に対する保険や不動産会社の保証サービスを活用するのも有効な対策となります。

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