178.宅地建物取引士とは何か?
※コラム内容は掲載当時の最新情報となり、現在改正されている場合があります
こんにちは!
イエステーション愛媛総合センター| 今治店の川又です。
不動産は「衣・食・住」の一つとして生活に欠かせないものですが、不動産取引に関しては一般の人々が頻繁に経験するものではありません。一般消費者が不動産取引の法律や方法に詳しくないのは当然のことです。
一方で、不動産会社は取引全般に関する豊富な知識や情報を持っており、消費者との間に大きな情報格差があります。このため、不動産会社が消費者の無知を利用して悪事を働く可能性も否定できません。
そこで、不動産の売買や賃貸の仲介を行う不動産会社(宅地建物取引業者、略して宅建業者)は、宅地建物取引業法(略して宅建業法)により様々な規制を受けています。
『この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正を確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、購入者等の利益を保護し、宅地及び建物の流通の円滑化を図ることを目的とする。』(宅地建物取引業法第1条)
この条文からも分かるように、不動産会社には、取引において消費者が損害を被らないようにする社会的責任があります。そのため、専門知識と経験を活用して公正な取引を行うことが求められています。
宅地建物取引士(略して宅建士)は、不動産取引の公正さを確保するための国家資格であり、不動産会社にとって欠かせない存在です。
宅地建物取引士にしかできない3つの業務
宅地建物取引士は、かつて「宅地建物取引主任者」と呼ばれていましたが、2015(平成27)年度の宅建業法改正に伴い名称が変更されました。この資格は、1958(昭和33)年に「宅地建物取引員」として創設されました。
不動産会社に勤務する人の中でも、宅地建物取引士にしか行えない業務があります。それは次の3つです。
①重要事項の説明
契約前に、その不動産に関して重要な事項を説明します。専門的な知識が必要なため、これを行うのは宅建士の資格を持った人に限られます。
『宅地建物取引業者は、宅地または建物の売買、交換または貸借の相手方、代理を依頼した者、または宅地建物取引業者が行う媒介に係る各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得または借りようとしている宅地または建物に関し、契約成立までの間に、宅地建物取引士をして、次に掲げる事項について、これらを記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。』(宅地建物取引業法第35条1項)
②重要事項説明書への記名押印
重要事項説明書に誤りがないか確認し、署名と押印を行います。
『第一項から第三項までの書面を交付する際には、宅地建物取引士は、その書面に記名押印しなければならない。』
(宅地建物取引業法第35条5項)
③契約書面への記名押印
重要事項の説明が終わり、双方が内容に納得すれば契約を締結します。その契約書(37条書面)にも、宅地建物取引士の署名と捺印が必要です。
『宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士にその書面に記名押印させなければならない。』
(宅地建物取引業法第37条3項)
宅地建物取引士に新設された3つの規定
宅地建物取引士への名称変更に伴い、宅地建物取引士に関する次の3つの規定が宅建業法に追加されました。
また、業法の解釈・運用の考え方にも関連項目が追加されました。改正のポイントを確認しましょう。
①宅地建物取引士の業務処理の原則
宅建業法はこれまでにも、宅地建物取引業者に対し誠実に業務を行うことを規定してきましたが、最近の改正では、宅地建物取引士自体に公正誠実義務が規定されました。これは、業者の義務を超えた詳細な規定です。
『宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事する際に、宅地または建物の取引の専門家として、購入者等の利益を保護し、宅地または建物の円滑な流通に寄与するよう、公正かつ誠実に業務を遂行することを義務付けられています。』(宅地建物取引業法第15条)
また、業法の解釈・運用の考え方(第15条関係)には「公正誠実義務について」として次のように明記されています。
『宅地建物取引士は、専門的知識を持って適切な助言や重要事項の説明を行い、消費者が安心して取引を進められる環境を整備する必要があります。これにより、宅地建物取引士は公正な立場を常に保持し、業務に誠実に従事することで、紛争を未然に防ぎ、リフォーム会社や瑕疵保険会社、金融機関など関連する業務者と連携して、宅地及び建物の円滑な取引を促進する役割を果たすべきです。』
②宅地建物取引士の信用失墜行為の禁止
宅地建物取引士の業務は、取引相手だけでなく、社会全体からも信頼されることを前提にして、新たに設けられた規定です。
『宅地建物取引士は、自身の信用や品位を損なうような行為を行ってはならないと規定されています。』(宅地建物取引業法第15条の2)
また、業法の解釈・運用の考え方(第15条の2関係)には、「信用失墜行為の禁止について」として以下のように記述されています。
『宅地建物取引士は、専門的な知識をもって重要事項を説明する責務を負っており、その業務が取引相手だけでなく社会からも信頼されることが求められます。そのため、宅地建物取引士の職業倫理に反する行為や、職務遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為は避けなければなりません。これには、宅地建物取引士の職務とは直接関係しない私的な行為も含まれます。』
③宅地建物取引士の知識及び能力の維持向上
宅地建物取引士は、宅地または建物の取引に関する事務を適切に行うために、常に最新の法令等を正確に理解し、それに基づいて実務能力を高めるとともに、知識を最新のものに更新することが求められる。
『宅地建物取引士は、宅地または建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。』(宅地建物取引業第15条の3)
業法の解釈・運用の考え方(第15条の3関係)には「知識及び能力の維持・向上について」次のようにあります。
『宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、常に最新の法令等を的確に把握し、これに合わせて必要な実務能力を磨くとともに、知識を更新するよう努めるものとする。』
まとめ
不動産取引は一般消費者にとって機会が限られ、取引金額も高額であるため、リスクの高い取引といえる。
さらに権利関係が複雑に入り組んでいることから、専門家の関与なくしては適切な取引は困難である。
加えて近年、耐震問題や土壌汚染、アスベスト対策など、宅地建物を取り巻く課題が山積しており、重要事項の説明項目も多岐にわたり複雑化している。
このように業務が高度化、多様化する中で、宅地建物取引士に課された役割はますます重くなってきている。
創設当初と比べ、一人ひとりの資格者に求められる専門性は格段に高くなっており、
職責を十分に果たしていくことが極めて重要となっている。
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